現代の医療現場では、デジタル化が急速に進んでいます。
その中心にある「電子カルテ」は、医療情報を効率的に管理し、患者により質の高いサービスを提供するための重要なツールです。
電子カルテは、単に紙のカルテをデジタル化するだけでなく、医療の質を向上させ、業務効率を上げるためのシステムとして多くの医療機関で活用されています。
電子カルテとは?
電子カルテ(Electronic Health Record, EHR)とは、患者の診療情報をデジタル形式で記録・管理するシステムです。
電子カルテでは、紙カルテと異なり診療情報をデジタルで記録することで、他部門や医療機関と円滑に情報共有でき、患者情報を一元的に管理することができます。
記録内容には診療歴や処方歴、検査結果(画像データを含む)、アレルギー情報などが含まれ、必要な際には瞬時にデータにアクセスできるのが特徴です。
日本では2000年代に入ってから電子カルテの導入が進み、厚生労働省は遅くとも2030年までに電子カルテの普及率100%を目標に掲げ、推奨しています。
しかし、電子カルテ導入の現状は、医療機関の病床規模により大きく異なっています。医療施設調査(厚生労働省)の「電子カルテシステム等の普及状況の推移」によると、2020年時点では、400床以上の医療機関では普及率が91.2%であるのに対し、200床未満の医療機関では48.8%となっています。また、一般病院の普及率は57.2%、一般クリニック(診療所)では49.9%と半数以下にとどまっています。
電子カルテ導入のメリット
- 業務の効率化:電子カルテを導入することで患者の診療履歴や検査結果などの情報をデジタルで管理できるため、医師や看護師が迅速にデータにアクセスできます。紙ベースでカルテの情報を管理する場合に比べ、検索や参照が容易になり、時間の節約につながります。
- 医療の質の向上:患者の診療履歴やアレルギー情報、薬の処方履歴を正確に把握できるため、治療や投薬において誤診やミスを防止しやすくなります。また、他の医療機関とデータを共有することで、患者にとって最適な治療法を選択するための情報も充実します。
- ペーパーレス化の推進:電子カルテはカルテや検査結果の印刷が不要になるため、ペーパーレス化を促進します。これにより、コスト削減と環境保護に貢献します。
- データ分析の活用:電子カルテに蓄積された情報は、データ分析により予防医療の推進や疾病の早期発見、地域医療の連携強化に役立ちます。
電子カルテ導入のデメリットと対策
- イニシャルコスト:電子カルテシステムの導入には殆どの場合初期費用がかかります。高額な費用になる場合もあり、特に中小規模のクリニックにとってはハードルが高くなり得ます。対策として、機械設備等必要品のリース契約や補助金制度の利用、初期費用を抑えやすいクラウド型の電子カルテの選択など、費用対効果を高める方法を検討します。
- 操作の習熟に要する時間:導入当初は、医師やスタッフがシステムに慣れるまでに時間がかかります。十分な研修プログラムを設け段階を踏んで運用すると良いでしょう。
- データセキュリティ:患者の情報は機密性が高く、厳重なセキュリティ対策と個人情報保護の遵守が求められます。強固なパスワードや2段階認証の設定、定期的なセキュリティ監査の実施、スタッフへの教育など、サイバーリスクなどに備えることが重要です。
電子カルテの種類
システムの種類:オンプレミス型・クラウド型
電子カルテには、オンプレミス型、クラウド型の2つのタイプがあります。
- オンプレミス型:院内にサーバーなどを設置し、ソフトウェアを含めたシステム全体を病院が管理するタイプで、セキュリティ性が高いのが特徴です。カスタマイズ性や拡張性が高く、医療機器との高度な連携も可能です。インターネット接続に依存しないため、システムの安定性を重視する病院に向いています。しかし導入時にハードウェアの購入や設定費用などが発生し、初期費用が高くなる傾向にあります。また、ネットワークやサーバー、ストレージ環境は病院側で構築する必要があり、データ管理、システム保守、ソフトウェアアップデート、バックアップなども病院側で行うか、保守費用を支払い、業者に依頼する必要があります。
- クラウド型:インターネット経由で利用するタイプで、すでに持っているPCやタブレット等から利用ができ、データはすべてクラウド上に保管される為、院内にサーバ等の機器を設置する必要がなく初期費用を押さえられる点がメリットです。データ管理、システム保守、ソフトウェアアップデート、バックアップなどはメーカー・ベンダー側に任せられます。しかし、インターネットの接続環境やメーカーのサービスの質に左右されます。
レセコン連携方式:レセコン一体型・ORCA連携型
さらに、電子カルテはレセプトコンピュータ(レセコン・受信機)との連携という点で2つのタイプが存在します。大きく分けて、レセコン一体型とORCA連携型があります。
- レセコン一体型:メーカーが開発した電子カルテとレセコンが統合されたタイプです。データの一貫性・整合性が高く、診療情報とレセプト情報を一元管理できるのが特徴です。このタイプは、システム間のシームレスなデータ交換を実現することで、業務の効率化やデータの重複・エラーの防止を図っています。例えば、診療報酬請求の業務などがスムーズになり、医療事務の負担を軽減することが可能です。
- ORCA連携型:日本医師会が提供する日医標準レセプトソフト「ORCA(オルカ)」と連携するタイプです。クラウド型電子カルテの多くはORCA連携方式を採用しています。このタイプは、既存のORCAを使用している医療機関にとっては導入時の負担が少なく、ORCAのコミュニティによるサポートが受けられるため、システムの拡張性や柔軟性が高いというメリットがあります。ただし、別々のシステムを連携させるため、導入時に専門的な調整が必要になる場合があります。



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